二人がそんな話をしている頃、神奈川の自宅に戻っていた吾郎は原因不明の悪寒に悩まされていた。
「なんか、ゾクゾクするな・・・。清水の風邪が感染ったか?」
昨日はあまりにもすることがなく清水の家に遊びに行ったのだが、熱を出して寝込んでいたのだ。
そのままほおっておくわけにも行かず、看病して家に戻ってきたのだが、先ほどからの悪寒はそのせいだろうか?
まさか、寿也が怪しい笑みを沖縄の地で浮かべているとは露知らず、ブルッと身震いをした。
その時、階下から桃子の呼ぶ声が聞こえてきた。
部屋から覗いてみると、どうやら小包が届いているらしい。
それを受け取り、首をかしげた。
宛名もあて先も不明。ふってみるとゴトゴトと音がする。
ドキドキしながら小包を開けて、中身を確認し、絶句した。
中に入っていたものはバイブだった。
(こんな嫌がらせすんのは、ぜってぇ寿也しかいねぇ!)
フルフルと箱を持ったまま震えていると、隙間から手紙がひらりと落ちてきた。
それにはこう書かれている。
『もうすぐアメリカに行っちゃうから、コレ持っていって寂しくなったら僕だと思ってね♪ バレンタインのプレゼントだよ。by寿也』
(いらねぇってんだよ!!)
まったく、何を考えているんだとばかりに頬を染めていると、階段を昇ってくる音が聞こえてきた。
吾郎は大慌てでベッドの下にそれを押し込んだ。
「さっきの小包なんだったの?」
「なっ、なんでもねぇ・・・大したもんじゃねぇから・・・あっちいけよ!!」
不思議そうに尋ねてくる桃子を吾郎は慌てて押し出し、ドアに鍵をかけた。
「・・・どうすんだよ、コレ・・・ココに置いておくと、アメリカ行ってる間に俺のシュミを疑われちまう」
膝を抱えて、前髪をかきあげながら、迷惑な贈り物に頭を悩ませる。
とりあえず、日本に置いておくわけにもいかず、捨てるのに細心の注意が必要になる。
明日飛び立つ予定で、ゴミ捨てはあさってだ。
(・・・・・・しゃぁねぇ・・向こうでこっそり捨てるか)
深い深いため息をつきながらとりあえず荷物の一番奥へと詰め込む。
(寿也の野郎・・・・怪しいもん送りつけやがって・・・)
こそこそとそんなものを持参してアメリカへ飛ぶことになってしまったことに、吾郎は苦笑いを浮かべるしかなかった。
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