窓の外は綺麗な満月。
月明かりが目の前の海を美しく照らしていた。
窓を開けバルコニーに出ると、潮風がとても気持ちがいい。
辺りに車など通る気配も無くシンと静まり返っていた。
「綺麗だな」
突然後ろから声がして、驚いた。
キーンが腕を回して吾郎を後ろからそっと抱き寄せる。
密着した背中越しに彼の規則正しい鼓動が聞こえてきて、不思議と心地よい感覚になる。
「二人きりの時は、ゴローって呼んでくれよ」
顔だけ向けて上目遣いで見上げると、視線が絡んだ。
腰にまわした腕に自分の腕を絡ませて、吾郎は少し背伸びして口付ける。
「!?」
さすがにこの行動にはキーンも驚いたらしく、一瞬彼の動きが固まった。
吾郎はニッと笑い、体勢を変えて向き合う形になる。
首に腕を絡ませるとキーンの抱きしめる腕にも力が入り、貪るように唇を塞ぐ。
「んっ……はっ」
息苦しくなり唇を離すと銀色の糸が二人を繋いでいて、それをまともに見てしまった吾郎は頬を染め、俯く。
「ゴロー。夜もだいぶ更けてきた。そろそろ休まないと明日に響くぞ」
「え? ああ、そうだな……」
窓を閉め明かりを消して一つのベッドで横になる。
ふわっと彼の匂いに包まれて、吾郎はドキドキが止まらずに眠れないでいた。
隣に彼が居ると思うと嫌でも意識してしまう。
寝返りを打つたびに身を硬くする吾郎の姿にキーンはフーッと緩く息を吐いた。
「早く寝ろよ。 それとも何かして欲しいのか?」
「なっ、んなわけねーだろっ! おやすみ!」
図星を突かれたのか真っ赤になって背を向ける吾郎が可笑しくて堪らない。
「おやすみ、吾郎……」
そっと頭をひとなでして、キーンはゆっくりと目を閉じた。
前/ススム