「眉村と何かあった?」
部屋に入るなり、寿也は吾郎に尋ねた。
「別になにもねぇよ」
部屋に着き、備え付けの浴槽に湯を入れながら吾郎は答えた。
寿也は黙ってその様子を伺っていた。
どうやら嘘はついていないらしい。
つい疑ってしまう自分に苦笑した。
しばしの沈黙のあと、吾郎は湯量を確認し寿也に声をかけた。
「なぁ、せっかくだし風呂くらい入ってけよ」
「いいけど、どうせなら一緒に入らないか?」
「えっ!?」
寿也の申し出に、吾郎は急に頬を染めた。
「なんだよ、今更。別に恥ずかしがることないだろ?」
「そ、それは……そうだけどよ」
「嫌なのかい?」
「い、嫌じゃねぇ。だけど、明日試合だし」
俯きながら話す彼に、寿也はクスッと笑った。
「お風呂いっしょに入っただけで、試合に影響でもあるわけ?」
なにを考えてるの?
意地悪く訊ねる、吾郎はカァッと頬を染めた。
「――ひょっとして、シたいの?」
「ばっバカッ! そんなんじゃ……」
近づいて、壁に凭れさせいきなりズボンの上から彼に触れる。
その瞬間吾郎はビクッと身体を強張らせた。
「やっ、やめっ」
「触って欲しそうな顔してる」
カタチをなぞるようにすると、だんだん彼が反応を示すのがわかった。
「どうして、こんなに熱くなってるんだい? 吾郎君」
「っ」
顔を真っ赤に染めて俯く彼に意地悪く笑う。
「おかしいね。何にもしてないのに……」
クスクス笑いながら耳元でわざと甘く囁く。
それだけの事に、期待してしまっている自分に吾郎は戸惑っていた。
明日は、代表選手との試合がある。
それなのに、寿也に触れられただけで鼓動は速くなり身体は熱く火照ってどうしようもなく彼を求めていた。
「とりあえず、お風呂行こう?」
寿也の言葉に吾郎はコクリと頷いた。
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