夕暮れの浜辺で、一人頭を悩ませていると、今度は英毅と入れ違いで眉村がやってきた。
それに気付き、吾郎は身を固まらせる。
「昨日は、すまなかった。その……無理やり……」
「別にもういいって」
今は、昨日の眉村の行為など吾郎にとっては小さな出来事にすぎない。
吾郎は膝を抱えたまま視線は海を見つめていた。
その隣に眉村は黙って腰掛ける。
「お前はさ……。俺のこと、もう嫌いになったかと思ってたぜ……最後がアレだったし」
最後に会ったのは確か自分の家。
てっきり愛想をつかされたと思っていたのだが、昨日の態度からするとどうも違うようだ。
「嫌いになれるなら……あんなことするわけないだろ?」
「そ、そうだよなぁ」
”あんな事”の言葉に反応し、お互いにグッと黙ってしまう。
二人の間には気まずい空気が流れていた。
海から来る、潮風と波の音だけが二人を包み込む。
「俺はさ、眉村とは友達でいたいんだよ。そういうのって無理なのか?」
「……努力する」
吾郎の言葉に眉村は短く答えた。
「あんだよ。努力しなきゃ友達にはなれねぇってか」
「当然だ。簡単に気持ちを捨てれるならとっくにそうしている」
「そっか。つーか、お前寿也と同じゴールデンルーキーだろ? さっさと他にいい奴見つけろよ」
「それが出来れば苦労はしてないさ」
「ははっ、それもそうか」
肩を竦めて笑いあう。
少しだけ場の空気が緩んだ気がした。
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