ランニングを終え部屋に戻ると、久々に寿也から電話が入っていた。
あわててかけなおすと、今日は空いてるから今から会えないか? と言われ二つ返事でOKする。
彼は一応有名人のため、おおっぴらに逢うことは中々難しい。
結局吾郎が足を2軍寮まで運ぶことにした。
寮につき、教えられた部屋のドアをノックする。
すぐに返事があり、ジャージ姿の彼が出迎えてくれた。
「ごめんね、吾郎君。僕のほうから連絡しといて、結局来させちゃって」
申し訳なさそうに話す彼の肩を吾郎はポンッと叩いた。
「別にいいって。有名人だもんなお前。俺と違って」
皮肉のつもりで言った言葉に寿也は小さく肩を竦める。
「僕はまだまだだよ。それに、吾郎君だってメジャー昇格間近じゃないか」
「さぁな。メジャーに上がったって活躍出来るとは限らねぇし、どうなるかなんてわかんねぇよ」
「それはお互いさま。僕だって2年目のジンクスとかプレッシャーとか既に色々言われてるからね」
苦笑しながら、吾郎の隣に腰を下ろす。
「それより、いいのか?」
「え? 何が?」
キョトンとした表情を見せる寿也に、吾郎は盛大なため息をひとつ。
「ここって部外者禁止なんじゃ……俺がいちゃまずくねぇ?」
「構わないよ。もう高校生じゃないんだから。それに……」
寿也は肩をギュッと引き寄せて抱いて耳元に唇を寄せた。
「僕らがこんな関係だなんて、誰も思わないよ」
勢いに任せてベッドに押し倒す。
首筋に唇をつけ吸いつくと、吾郎はビクリと体を震わせた。
「ちょっ、寿! こんな昼間っからナニ考えてんだよっ」
「吾郎君は、僕とこういう事するの嫌なのかい?」
顔を覗きこまれ、ウっと言葉に詰まる。
寿也にかなう筈がないのは吾郎もわかっていた。
「ずるいぞ。聞くなよ、んなこと」
拗ねたように唇を尖らせ、視線を反らす彼が愛しくて堪らない。
ギュッと上から覆いかぶさるように抱きしめ、ゆっくりと唇を重ねる。
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