海堂編
LoveSick
その夜、吾郎はキーンの部屋へ足を運んだ。
どうしてもやり残した事があるから、バッツへ残りたいと告げるとキーンは呆れて眉間に手を当てて軽く頭を振った。
「信じられん。上へ上がれるチャンスをふいにしてまで残りたいなんて」
「まぁ、俺にも色々事情があるんだよ」
「俺と離れる事になっても、か?」
「……っまぁ、な」
真っすぐに見つめて尋ねられ、一瞬言葉に詰まる。
「離れるっつっても、優勝したら直ぐにメジャー組に合流してやっから」
そんな呑気な事を言う吾郎に、キーンはハァと深い溜息をついた。
吾郎の意思が固い事を理解し、吾郎に背を向ける。
「キーン……」
「勝手にしろ。俺が止めて聞くような奴じゃないだろう」
さっさと行けとばかりに手で追い払う仕草をする。
「悪いな。 でも、直ぐに追いつくから」
部屋を出る前にもう一度振り返り、複雑な気持ちを抱きながらキーンの部屋を後にした。
(――これでいい。 これで、ジュニアとの勝負に集中できる)
ジュニアを倒さないでメジャーになど上がれるわけがない。
(待ってろよ、ジュニア。絶対にぶっ倒してやる)
拳をグッと握りしめ、吾郎は打倒ジュニアを誓った。
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