シーツを掴み与えられる刺激に耐えながら、僅かに吐息を洩らす。
キシキシとベッドのスプリングが音を立ててそれに喘ぎ声を合わせれば結構なボリュームになる。
いくら真夜中とはいえ誰に聞かれてしまうかもわからない状況で吾郎は出来る限り声のトーンを落とし喘ぎ声を洩らさぬように気をつけていた。
「なにを考えている。ゴロー」
行為の最中にキーンに言われドキッとした。
先ほどからどうしても寿也の顔が頭に浮かび、彼の名を呼びそうになるのを必死に堪えていたところだった。
「な、なんでもねぇから、続けろよ」
はぁっと、前髪をかきあげながら熱く息を吐く。
最近は彼と身体を重ねながら、日本にいる寿也のことを思い出す日が多くなっていた。
行為の後半は意識が飛んでしまい何も考えられなくなるが、自分に余裕のあるときはたいてい彼を思い出す。
そのたびに、キーンに見透かされこうやって声をかけられるのだ。
キーンは、そんな彼に深く追求しようとはせず再び動き出す。
「あっ……っあン……ぁっハァ……」
心とは裏腹に身体だけは従順に反応を起し、自らを高みへと追い詰めてゆく。
最初はあまりの大きさに戸惑っていたものの、何度も逢瀬を重ねるうちに慣れてきて痛みより快感を強く感じている自分に吾郎は苦笑した。
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