窓の外には、キラキラと星が輝いてうんざりとした暑さの中でも、美しく見えた。
木々の間からは大きな満月が見えて幻想的な雰囲気を醸し出している。
吾郎はバルコニーへ出て、ふと空を見上げた。
寿也も今頃はこの空を眺めているだろうか?
「日本じゃ、今頃昼飯時だな」
吾郎のいる東地区と日本は約13時間ほど時差がある。
同じ世界にいるのに、共有する時間が違うことに苦笑した。
アメリカについてすぐに置き引きされたバックの中に寿也のいるウォリアーズ2軍寮の電話番号を記した紙を入れていた。
それをなくしてしまった以上、彼と連絡を取るのは不可能で吾郎はバルコニーの柵にもたれかかり、もう一度空を見上げた。
「逢いてぇよ……寿」
無理な願いだとは判っているが、つい口をついて出てしまう。
一人でいると、とてつもない寂しさに襲われて不安になる。
なんとなく一人で居たくなくて、その不安を打ち消してくれる人物のところに行こうと思い立った。
「キーン……もう寝てるよな」
ゆっくりと身体を起し、部屋を出ると吾郎はすっかり寝静まった廊下を出来るだけ物音を立てないように歩く。
あるドアの前に着き、作ってもらった合鍵でドアを開け、中に入る。
「なんだ、また来たのか」
寝ていると思われた彼は、起きていて次の試合のデータを覚えていたところだった。
「悪りい。迷惑だったら戻るし」
「どうせまた、ホームシックだろ? 仕方の無い奴だ」
手にしていた書類を置き吾郎の側へ行くと何も言わずに抱きしめる。
彼の規則正しい鼓動を聞くと、自然にさっきまでの不安が消えてゆくのを感じる。
「なぁ、今夜泊まっていいか?」
「……ダメだといっても泊まるつもりだろ?」
「良くわかってるじゃねぇか。さっすが俺の恋女房だな」
ため息混じりにいわれ、吾郎は気にも留めずにさっさと彼のベッドに座りジッと彼の作業が終わるのを待つことにした。
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