その日から一週間、サンダースは二人の決定的な証拠を掴もうと目を皿のようにして彼らの行動を逐一観察していた。
しかし決定的な証拠を得ることが出来ず、やはりあれは見間違いだったのかとそう思うようになっていた。
サンダースが二人が付き合っている証拠を得られないのには当然のことだった。
二人が逢瀬を重ねるのはたいてい皆が寝静まった真夜中で、しかもキーンが彼の部屋へ足を運ぶことは無く常に吾郎が彼の部屋へ通っていた。
慎重派のキーンは当然、吾郎の身体の表面に証拠を残すことは無く二人のことを知るものは誰もいない。
普段の生活でも決して二人っきりでいることは無く、自然体でみなに溶け込んでいて疑う余地はなかった。
サンダースが着替えを済ませロッカーを出ようとすると、ちょうど着替えに来た吾郎にばったり出会った。
彼は普通に自分のロッカーを開けて着替えを始めている。
ふと吾郎はサンダースの視線に気がつき、訝しげな表情を向けた。
「あんだよ。俺の背中になんかついてんのか?」
「あ、いや……。ちょっとお前に聞きたいことがあってな」
「聞きたいことだぁ? 珍しいな、なんだよ」
着替えている手を止め、ジッと彼をみやる。
サンダースは、一呼吸置いてから思い切ってこの間の真相を尋ねてみることにした。
「この前、お前キーンとキスしてただろう。……付き合ってるのか?」
「はぁ!? な、何言ってんだよ軍曹! んなわけねぇっだろ!?」
顔を引きつらせ、思いっきりオーバーアクションでサンダースを見る。
「俺がキスしてたぁ!? なんかの見間違いだろ!? ハハハッ」
乾いた笑いをしてカンの鋭いものならばコレが嘘だとわかったかもしれないが、幸か不幸かサンダースはこの嘘に気がつかなかった。
「そうだよなぁ。見間違いか。変なこと聞いて悪かった」
「お、おう。……たくっ、ビックリするようなこと言うんじゃねぇよ」
内心ホッとしながら、急いで着替えを済ませる。
「よく考えたら、お前はそういう奴じゃないよな。ガハハハっ」
「……」
一緒にロッカールームを出て、引きつった顔のままモーテルへ戻る。
サンダースと別れ、自分の部屋に着いた吾郎はパタンとドアを閉めてそのままズルズルと床に座り込んだ。
「っぶねぇ、まさか軍曹に見られてたなんて……。まぁ、アイツはそんなに深く考えるタイプじゃねぇし、大丈夫だと思うが気をつけとかねぇとマジで誰に見られてっかわかんねぇな」
そう呟いて、重く息を吐いた。
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