海堂編

LoveSick


夕方まで散々泳いだ後、吾郎は帰りの車の中で爆睡していた。

自分たちの寝泊りしているコンドミニアムに辿り着き、車を止めてエンジンを切った。

「おい、ゴロー。着いたぞ、起きろ」

「ん……まだ眠みぃ」

「ほら、寝るんなら自分の部屋で寝ろ」

ゆさゆさと身体を揺さぶってみるが、起きる気配は無く彼はヤレヤレと肩をすくめた。

さて、どうしたものかと悩んでいると、目を覚ましたのかうっすらと瞳が開き目が合った。

「やっと起きたか…………っ!!」

次の瞬間、吾郎の腕がにゅっと伸びて首に回され口付けをしていた。

「お、おいっゴロー!」

戸惑う彼をよそに吾郎は何度と無く口付ける。

「誘っているのか?」

「べっつに〜。したかったからキスしたんだよ」

ニッと笑うと大きく伸びをする。

「ふあぁっ、早く部屋に戻ろうぜ。 眠くて仕方ねぇや」

「あぁ、そうだな」

ヤレヤレと肩を竦めて、短く息を吐くと二人は車を降りた。


車の中でのその行為を偶然通りかかったサンダースが目撃していることは、さすがのキーンも気付かなかった。


(あいつら……男同士で何をやってたんだ)

自室に戻ったサンダースは自慢のひげを撫でながら、先ほど見た光景を思い出していた。

確かにあれはキーンだった。

最初、相手は女だと思い気にも留めなかったが、車から降りてきたのは吾郎で他には誰も乗っている様子はなかった。

(まさかあの茂野が……)

驚きのあまり声も出せず、とっさに身を隠したが、彼らの秘密を知ってしまったのは確かだった。

コレを利用してキーンから正捕手の座を奪い取るチャンスかもしれない。

ふと、そんな考えが頭をよぎる。

しかし、そうなると必然的に吾郎までも迷惑をこうむることになる。

キーンから正捕手の座を取り返したいが、クローザーである彼の評判は落としたくなかった。

さて、どうしたものだろう。

サンダースは何かいい案が無いか必死に考えたがその夜結局答えが出ることはなかった。

/ススム




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