海堂編
LoveSick
吾郎がひとしきり泳いで戻ってきた時には、キーンはその瞳を閉じて眠っていた。
外国人らしい彫の深い整った顔にしばし目を奪われる。
(やっぱ日本人と違って綺麗だよなぁ……)
マジマジと見つめて思わず、ほうっと感嘆のため息が出る。
「……そんなに見つめられると、穴が開きそうだ」
「!!」
瞳を閉じたまま、突然言われ吾郎は飛び上がるほど驚いた。
「お、起きてたのかよ!」
「ゴローの熱い視線で気がついた」
ゆっくりと身体を起し、色の深い瞳で見つめられて、ドキッとする。
「キスの一つでもしてくれるかと思ったんだが、期待はずれだったな」
「なっ、バッカじゃねぇの!? 俺がこんな人ごみの中でそんな事するかよ」
「そうか、それは残念だな」
頬を染め、慌てふためく吾郎の姿が可笑しくて、思わず失笑が洩れた。
前/ススム