海堂編
LoveSick
11月20日の新聞各紙にはドラフトの結果を喜ぶ寿也と眉村の姿が大きく報道されていた。
さらに、テレビや雑誌などメディア各局で大物ルーキーの報道合戦が始まって、吾郎は寿也とまったく会えない日々に逆戻りしていた。
あの日以来、彼には会っていない。
吾郎は寿也の記事が載った情報誌を床に放り投げソファにもたれかかる。
カーテンの隙間からは11月の澄んだ空気に星がキラキラと輝いているのが見え隠れしていた。
もう、半月近く彼には会っていない。
たったこれだけ会えないだけで、寂しさを募らせていてはアメリカ行きにも不安が残る。
わかっていることだが、やはり逢いたい思いは拭えない。
キッチンから夕食を作るよい香りがする中、吾郎はおもむろに立ち上がった。
「母さん、俺ちょっとランニングに行ってくる」
「えっ、今から!?」
桃子の声を聞く前に、玄関を開け外に飛び出した。
暖かい部屋の中とは違い12月も間近に迫った外の空気は寒々としていた。
あても無く走り続け、辿り着いたのはいつもの土手。
寿也とキャッチボールをしたりした思い出の場所だ。
彼は寂しくなるとたいていココに足を伸ばす。
ゆっくりと呼吸を整え空を見た。
モドル/ススム