海堂編

LoveSick


新学期が始まり、来年度の廃部がほぼ決定していた聖秀野球部も清水を新キャプテンとして存続が見込まれた。

足の怪我も順調で今年のプロ入りが絶望と思われていたが、ブルーオーシャンズから指名されるらしいと言う事もわかった。

自分の進路もほぼ決定し、安心したらもうかれこれ2ヶ月ほど寿也と連絡していないことに気がついた。

甲子園の後、きっと忙しいだろうと思って自分からあえて連絡しなかったが、もうそろそろ暇になった頃だろうか。

彼がどこのチームに行くのかも気になるところだ。

ギプスがやっと取れたその足で、吾郎は寿也の家に向かった。

けれど、出てきたのは割烹着姿のおばあさんだけで、家にはいないと言う。

いきつけのバッティングセンターにいるという話を聞いて、早速足を運んだ。

久しぶりに会った幼馴染はさすが海堂の4番らしく150キロの球を一本のミスもなく確実に当てていた。

しばらく話をして、彼がウォリアーズに行くことを知った。

敵チームではあるが、上手くいけばまた寿也と戦える。

それがわかって、とても嬉しくなった。

眉村は、ブルーオーシャンズ他色んなところから指名を受けているらしい。

さすが有名人は違う。

寿也の嬉しそうな顔に、なんだか気恥ずかしさを覚え鼻の下をこすった。

「ねぇ、これからまだ時間ある?」

もう少し君といたいから。

そう言われ、コクリと頷いた。

寿也は、未だ松葉杖生活の吾郎を気遣って家で話をしようと持ちかけてきた。

一緒に歩きながら、歩幅を自分に合わせてくれるその優しさが嬉しく思え笑みが零れた。

「何笑ってるのさ?」

「べーつに。なんでもねぇよ」

照れ隠しにふいっと横を向くと、寿也が反対に回って顔を覗き込む。

このほどよい距離が吾郎には心地よく思えた。


モドル/ススム



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