部屋の前に辿り着き、吾郎は深呼吸を一つして持っていたキーで部屋を開けた。
そーっとドアを開けると、視線の先に人の足元が見えた。
「遅かったっすね、先輩。朝帰りなんて今までナニやってたんっすか?」
「た、大河! お前、もう起きてたのかよ」
「起きてちゃ悪いっすか?」
驚きと焦りの表情を見せる彼に、ぶすっとした口調で答える。
あんな状態で寿也と別れて眠れるはずなんてなかった。
しかも朝まで吾郎が彼の側に居たのだと思うと嫌悪で吐き気すら覚える。
吾郎の顔をジッと見つめると、彼はパッと視線をそらす。
嫌な空気が流れ、吾郎は冷や汗が背中を伝った。
「悪りぃけど、俺もう少し寝るわ飯時になったら起こしてくれ」
居心地の悪さに限界を感じ、ばったりとベッドに倒れ込む。
壁を向いて目を瞑ると背後からわざとらしい溜息が聞こえてきた
。
「7時になったら起きてくださいよ? 一度しか起こしませんから」
「へいへーい」
軽く手だけで合図して、適当に布団を被る。
朝食の時間まであと2時間。
(俺も少し休まないと暑さにやられるかもしれないな)
となりに恋敵が居ると思うととても眠れたものじゃなかったが、少しでも身体を休める為大河もまた吾郎に背を向けて目を閉じた。
モドル/ススム