海堂編
LoveSick
澄み切った空には満天の星
吾郎は携帯のディスプレイを開いたり閉じたりしていた。そこにはかかってくるはずの無い『佐藤寿也』の文字。
「バカだよな……俺」
こんなところにきても彼に会えるわけは無いのに、なぜかいてくれるような気がして足を運んでしまう。
(今頃、寮で飯でも食ってんのかな)
「逢いたいなぁ」
「誰に、会いたがってるんだい?」
「誰にって寿に……!」
突然聞き慣れた声がして、慌てて後ろを振り向く。
その人物を見て、吾郎はキツネにでもにつままれたような顔をした。
「なっ、なんで」
こんなとこにいるはず無いのに……。
「なんで寿也がこんなとこにいるんだよ!?」
これは幻?
自分が会いたいと思っているから都合のいい夢でも見ているのだろうか。
目の前にいる寿也は、柔らかい笑顔を浮かべて彼を見ていた。
「寿?」
「なに吾郎君?」
「ほ、本当に寿也か!?」
恐る恐る触れてみれば暖かい。
「そうだよ。さっきからそう言ってるじゃないか」
隣に座り優しく微笑む彼を見て、思わず吾郎は飛びついた。
その思いを受け取るかのように寿也は優しく抱きとめる。
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