海堂編

LoveSick


吾郎は、枕をぎゅっと握り締め声が洩れぬよう、必死に耐えていた。

すぐ外では寮の仲間達が朝の挨拶を交わしている声が聞こえ、それが余計に彼の羞恥心を煽る。

どんなにガマンしても、寿也と一つにつながっていると言うその事実が、吾郎の頭の中を空っぽにしてゆく。

「あぁっ……んっ……ふぁッ」

少しずつ洩れ出る喘ぎ声は、寿也の動きに合わせるように大きくなりつつあった。

そのたびに彼はキスという形で口を塞がれ声を押し殺す。

「寿……アッ……寿……!」

吾郎はうわ言のように彼の名前を繰り返して、シーツを掴み身体を仰け反らせる。

「お、俺……もう……ダメっ! あっぁあっ――!」

一際甲高い声を上げて、吾郎はぐったりと倒れこんだ。

寿也もあとを追うようにして、果てゆっくりと彼の側に寄り添う。

「……ずいぶんと色っぽい声だったね」

「寿が触るからだよ!」

恥ずかしそうに枕に突っ伏する彼の横顔をそっとなでる。

「頑張って、行っておいでよ」

「!?」

寿也の言葉にはじかれたように身体を起す。

「もう、決めちゃったんだろ? ギブソンに会いに行くって」

「サンキュ、寿」

優しく見つめる彼に少し照れながら、はにかんだ笑顔を見せる。

そんな彼を見て、寿也が急に真面目な顔になった。

「ど、どうしたんだよ、寿?」

「吾郎君……アメリカ行って、知らない外国人についてっちゃ駄目だよ」

「はぁ?」

いきなりの言葉にぽかんと口を開けたまま、しばし考える。

寿也は何が言いたいのかわからない、そんな顔をしていた。

「アメリカって言えば同性愛がいっぱいいるんだから、君なんかすぐに食べられちゃうよ」

「食われるわけねぇだろ!? 何言ってんだよ!バカっ」

変なこと言うなとばかりに、声を荒げハッと口を噤む。

「大丈夫だって」

「僕は、本気で心配してるんだから。吾郎君が外国人じゃなきゃ駄目な身体になっちゃったらどうしようって」

「おまっ、何考えてんだよ! そんな事ありえねぇし、外人となんかヤるわけねぇだろ」

「そうかな? だって吾郎君こんなにエッチな身体してるからそんなの見たら誰だってムラムラするよ」

「ムラムラって……お前なぁ……」

すっかりあきれ返ってしまった吾郎にもう一度深いため息をつく。

「とにかくアメリカ行ったら、僕は守ってあげれないんだから」

「わかってるよ」

「お金とか落としてその辺の人に拾われたりしないでよ?」

「おい! 俺は猫か!?」

心配してくれているのはわかるがいくらなんでも金を落とすことなんてありえないだろ?

そう言って、苦笑する。

/ススム



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