吾郎から突然かかってきた電話に、眉村は驚いていた。
もうかかってくる事も無いだろうと思い、そろそろ吾郎の番号も消してしまわなければと思っていた矢先のことだ。
まぁ、未だに彼への思いを捨てきれず、消去ボタンが押せないと言うだけの話だが。
諦めかけていた彼からの電話。
舞い上がりそうになる気持ちを抑え話をする。
ところが、受話器から聞こえてくる声は何所か元気がない。
最近、寿也の様子がおかしいのと何か関係があるんじゃないか。
なんとなく、そんな気がした。
迷ったものの、せっかく逢いたいといってくれているのだからとしばらく考えてからOKした。
夜もだいぶ更けた頃、眉村は消灯を過ぎた寮をこっそりと抜け出した。
今まで無断外出などしたことはなかったが、どうしても先ほどの吾郎の落ち込んでいるその声が気になっていてもたってもいられなくなった。
自転車を漕いで、吾郎の家の前に辿り着いた。
うっすらと吾郎の部屋から明かりがともっているのが見える。
眉村は携帯を取り出し、電話を入れてみた。
『眉村? なんだよ、どうした?』
すぐに電話から彼の声が聞こえてきた。
家の前にいることを告げると、カーテンが開き姿が見える。
『ちょっと待ってろよ!』
プチっと電話が切られ、すぐに吾郎が玄関から飛び出してきた。
「どうして……、明日会おうって約束……」
全て言い終わる前に、抱きしめた。
「お前の声がなんとなく元気なかったから、心配になって」
「……っ」
吾郎は何も言わなかったが、背中に手を回し擦り寄ってきた。
その肩がわずかに震えているような気がしたのは気のせいだろうか?
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