「変わらないね……吾郎君は。……すごいよ」
「あン?」
「正直言って、今回の試合誰も……君が僕らをあそこまで苦しめるなんて思ってなかった。怪我までして、全身ぼろぼろなのに最後まで戦って……本当に凄い」
その不屈の闘志は一体どこから来るのか、もし自分が彼の立場ならとっくに諦めていたかもしれない。
「全然すごくねぇよ」
「えっ?」
「俺が頑張れたのはこんな俺についてきてくれたアイツらのおかげなんだ。一人だったら絶対途中で挫折してた」
「吾郎君……」
寿也は今まで見たことも無いような表情を見せる彼を見て、言葉が出なかった。
自分の知らない仲間同士の深い絆があるのだろうと、少し寂しい気持ちにもなる。
吾郎はまっすぐに寿也を見据え言葉を続けた。
「それに、俺の目指す先にお前が居てくれたから……俺は頑張れたんだ」
目指す先に寿也が居る。それがくじけそうになる自分の心を支えていた。
すばらしい仲間と、最高のライバル。
この2つがあったからこそ、今の自分がある。
そう語る彼の顔はとても嬉しそうだった。
そんな彼をまじまじと見つめ、寿は胸の奥底に封印したはずの感情がわきあがってくるのを感じ、苦笑する。
「あのな、寿」
急に真顔になり、声のトーンを落とす相手に寿也の肩がピクリと反応する。
「俺、お前にずっと言わなくちゃいけないことがあったんだ」
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