バスに揺られること数時間。
宿泊する予定のホテルに到着した。
「うっわー、結構豪華じゃん」
「先生、やっるー♪」
みんなが喜んでいる横で、吾郎だけは別のところに視線を送っていた。
自分が降りたバスの近くに、見覚えのあるバスが停まっている。
神奈川ナンバーで後ろのロゴがKAIDOUと書いてあった。
(あれって、もしかして……)
「なぁ、おっさん!まさかココにアイツ等がいるわけじゃねぇよな?」
少しの期待を胸に尋ねると、山田はにっこりと微笑んだ。
「yes! よく気がつきましたね。ココには、君たちが最後に戦った海堂の選手団が宿泊してるんです」
その言葉に一同はざわめいた。
「実は、この旅行は海堂の井沢監督からの企画されたものなんです」
「な、なんで?」
「先の試合でノゴロー君が足を負傷した原因が、前部長の仕業だとわかりその償いのためだそうです。きっと、ノゴロー君は甲子園に行きたかったはずだからと」
「よかったじゃねぇか。茂野!」
山田の話を聞いていた藤井が吾郎の肩をポンと叩く。
「ああ。いい退院祝いになったぜ」
彼らが同じ場所にいる。
そう考えただけで、胸が高鳴る。
一緒に黙って聞いていた、綾音も、ここに憧れの寿也がいると知って、ドキドキしていた。
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