「部屋を変えて下さい!」
バスに乗って、渡された相部屋のリストを眺めていると、大河が不満そうな声を上げた。
部屋は2人部屋で、マネージャーの中村と彩音が同じ部屋。
藤井と田代、宮崎と内山がそれぞれペアになった。
他のメンバーもそれぞれペアが決まり、そのままそれがバスの席順になる。
吾郎の隣には大河が座り、通路を挟んでマネージャーたちが座っていた。
「清水君、何か不都合でも?」
「不都合も何も、茂野先輩と同じ部屋だなんて、俺嫌です」
あからさまに嫌そうな顔をする大河に、周囲の視線が集まる。
「……」
あの日以来大河と話していなかったが、関係が改善するどころかここまであからさまに態度に表わされてはどうしようもない。
「そうですか、それは困りましたね」
すっかり遠足気分だったメンバーは大河の憤慨ぶりに二人の間で何があったのかとざわめき始める。
「たくっ、いつまでも根に持ってるんじゃねぇよ。つか、せっかく楽しい旅行なんだから水差すような事するな」
窓の外を眺めながら呟くと、大河はキッと睨みつけてきた。
「俺はこのままでいいっすよ」
「ちょっ、茂野先輩!」
「なんだよ、お前もガキじゃねぇんだから決まった事に今更文句言うなよ」
「……っ」
大河は憎々しげに唇を噛むと、口をへの字に曲げたまま腕を組んでシートに身体を凭れかけた。
(あーぁ、こりゃコイツと和解は無理そうだな……)
すっかり不貞腐れた大河を眺め、吾郎は胃がキリキリとする思いがした。
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