準決勝もあっさりとコールド勝ちし、海堂高校は決勝へと駒を進めた。
「よう、今日は今まで以上に絶好調だったな」
薬師寺が、主将の寿也の肩をたたく。
「うん、これもみんな薬師寺のおかげだよ」
「はぁ? 俺は何もしてないぞ?」
彼の言っている真意がわからず首をかしげる。
そんな様子に寿也がクスッと笑った。
「ほら、この間ちゃんと気持ちの整理して来いって背中を押してくれただろ?」
その言葉に、彼は「あっ」と言う顔をする。
この2日ほど機嫌がいいのはそのせいだったのかと、妙に納得してしまった。
「んで、その彼女とはうまくいったんだな?」
「うん、たぶんね」
なんとなく歯切れの悪い答えにもう一度首を傾げる。
「なんだよ、うまく伝えたんだろ?」
「それが……言葉より先に身体が動いちゃって、ハッキリとは伝えてないんだ」
「……は……?」
はにかみながら、窓の外を見て語る彼に薬師寺は、一瞬何を言っているのかと思考が止まってしまった。
「お前つまりそれって告る前に、ヤッちゃったってことか?」
思っていた以上に手の早い奴だと内心思う。全くそういうものには興味なさそうな顔してるくせに、涼しい顔して何を考えているのか。
呆れてしまった。
「まぁ、だいたいそんなとこだよ。好きな子相手ならそれも仕方無い事だと思うけど?」
いけしゃぁしゃあと言い放ちにっこりとほほ笑む。
薬師寺の中で寿也のイメージがガラガラと音を立てて崩れていく。
「ははっ、まぁ主将としてしっかりやってくれるんなら何でもいいか」
苦笑交じりにそう言って肩をポンポンと叩いた。
そんな二人のやり取りを、眉村は遠くの方で静かに見つめていた。
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