「ふ、藤井先輩と、田代先輩!!」
「なんだよ、なんかヤバイもんでも見つかったような顔して……お前も茂野の見舞いだろ?」
入らないのか? と言いながらドアに手をかけそうな田代。
「あーっ! ダメですよ先輩! いま中に入っちゃ!!」
止めようとしたが、田代は既にドアに手を掛けており、恐ろしい修羅場を想像して大河は目をぎゅっとつぶり身体を強張らせた。
ところが――。
「うわっ、ドアが勝手に開きやがった。って、あれ? アンタは……」
「……?」
驚愕の声が響き大河は恐る恐る目を開く。
そして、ドアの前に立っていた人物に声を失った。
「あれ? 君たちは聖秀の……吾郎君のお見舞い?」
目の前で爽やかな笑顔を見せているのは、紛れもなく寿也で室内には彼と吾郎しかいない。
と、いう事はさっきの相手は寿也という事になる。
(そんな……佐藤先輩と茂野先輩が……)
確かに、吾郎の寿也への執着はただの幼馴染へのそれとは何か違うような気がしていた。
前回怪我をしたときも寿也の姿を目撃した事もあった。
薄々気がついていた事だったが、二人が深い仲だと言う事実を突きつけられ全身の力が抜けていくような感じがした。
「清水?」
「!」
名を呼ばれハッと我に返る。
目の前にはずっと憧れていた佐藤寿也の姿。
「君も見舞いじゃないのかい? もう二人は行っちゃったよ」
「あ……いえ、今日はいいです。とてもそんな気分じゃなくなりましたから」
「?」
胸に沸いたざわめきが未だに治まらない。
手足がジンと冷たく痺れている様なそんな感覚さえ覚える。
今、どんな顔をして吾郎に会えばいいのか。
わからない。
胸を掻き毟りたいほどの衝動に駆られシャツをギュッと握り締めた。
「俺、今日は帰ります!」
寿也に見られているその視線に耐え切れず、大河は彼の脇をすり抜けて走って病院を飛び出した。
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