鬼畜眼鏡

LoveSick


「――ここは?」

目覚めるとそこは職場ではなかった。

見覚えのある天井を眺め辺りを見回す。

ここは、佐伯の部屋……か。

人の気配は無く、サイドテーブルには置手紙が一枚。

『今日は無理して出勤しなくてもいい。ゆっくり休んでください』

几帳面な字でそう書かれていた。

私は、途中で気を失ってしまっていたのか。

部屋の後処理と私をここまで運ばせてしまった罪悪感に苛まれる。

「アイツ、今日中に仕上げる仕事があるとか言っていたな」

本当に休まなければいけないのはあいつのほうじゃないか。

鈍く痛む腰をかばいつつ急いで身支度を整える。ふと、カバンの中を覗くと佐伯から貰ったフレグランスが目に付いた。

「――これはっ」

昨日は香りまで確認する余裕がなかったが改めてその香りを確認する。

「こんなもの使えるかっ」

自然と赤くなる頬を押さえつつそれをテーブルに置いた。

だってこの香りは――アイツと同じもの。

同じ香りをつけて仕事なんて、集中できるはずは……。

だが、折角貰ったものを使用しないというのも気がひける。

「……っ」

暫くその瓶と向き合って悩んでいたが、やはり今日だけは付けていく事にした。

佐伯のからかうようなあの視線を想像しながら、私は職場へと向かった。




/ススム



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