オレはアイツが苦手だ。
傲慢で、人の気持ちなんか平気で踏み躙って、みんなを見下して……。
オレの中にそんな考えを持ったもう一人の<俺>が居るなんて認めたくない。
同じ一人の人間なのになんでこうも違うんだか。
オレには<俺>の考えが理解できない。
正直会いたくも無い。
そう、思っているのに……。
家に帰ると何故かサイドテーブルの上に大きな石榴が置いてあった。
またアイツがオレを呼んでるんだ。
嫌ならかじらなければいい。
わかっているのに、手が勝手にそれを掴み口元へ運ぶ。
ドクンドクンと次第に高まってゆく鼓動。
ほんの一口かじっただけで世界は暗転し、オレは意識を失ってしまった。
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