「お前、佐伯の事好きなんだろう?」
「ゲホッ、ゲホッ、な、なんだよっ急に」
急に聞いてみたくなって、冗談で言ったら思いっきり噎せやがった。
それが答えだと瞬時に理解して聞いてしまった事を激しく後悔する。
「別に。お前のあいつに対しての思い入れは凄いからな」
「まぁな。 俺自身もついこの間まで気がつかなかったんだけどさ」
そう言いながら照れているのか、ほんのり頬を染め鼻の下を擦る。
コイツは俺が思っている事なんか微塵も気づいていないんだろうな。
虚しさと切なさで胸がいっぱいになり思わず持っていた空き缶をグシャリと手で握りつぶした。
「そうか。 ま、佐伯に愛想尽かされたら俺が面倒みてやってもいいぞ」
「なっ、愛想尽かされるって……余計な世話だっつーの!」
すっかり面喰ってアホ面になる本多。
「楽しそうだな。二人で何話してたんだ?」
ひょっこりと何も知らない佐伯が顔を覗かせる。
「別に。ただの雑談だ」
「雑談って……」
不思議そうにしている佐伯の脇をすり抜け真っ白なボールを掴んだ。
「ほら、続きやるぞ」
「んだよ、もう少しゆっくりしてようぜ」
「何を言ってるんだ。お前はもう沢山休んだじゃないか」
渋々と本多がコートに戻ってくる。
この胸の痛みはそう簡単には消えてくれない。
コイツへの思いもきっと……。
二人を心の奥底から祝福してやれる日が来るのかはわからないけれど。
まだ暫くは、友達と言う演技をしておいてやるよ。
色々な思いを乗せて、俺は高くトスボールを上げた。
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