鬼畜眼鏡
LoveSick
この得体のしれない感情が何なのか、俺は薄々感づいていた。
だが、それを認めるには勇気がいるし、あいつへの気持ちを自覚してしまった所で何か状況が変わるわけでもない。
思いを打ち明けて嫌われるくらいなら今まで通り、友達として接していたほうがいい。
折角こうして以前のように一緒にバレーが出来るまでになったんだ。
それ以外に望むことなんてない。
そう、思っているのに……。
佐伯と本多が二人でいる所を見るたびに胸が苦しくて、叫び出したい気分になる。
抑えきれない感情が溢れ出しそうで拳をギュッと握りしめた。
「なぁ、あいつ結構良いセン行ってると思わねぇ?」
俺が休憩していると、本多がスッと隣にやってきた。
その視線は佐伯の方に向けられ自慢気に俺の脇腹を小突く。
「まぁまぁ、だな。カンはいいと思うが動きが鈍すぎる」
「ゲー、相変わらず辛口だな。お前」
「俺は率直な感想を述べたまでだ」
正直、学生時代も本多が佐伯に拘る理由がわからなかった。
大して目立つ存在でもないアイツの何処がいいんだとずっと思っていた。
そう、ずっと……。
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