鬼畜眼鏡

LoveSick


「よし! やるか松浦!」

「あぁ」

ポン、と大きな手が俺の肩に乗る。

大学を卒業し、別々の会社に就職してもう二度と会う事もないだろうと思っていた男は意外な形で俺の前に現れた。

正直顔も見たくないほど憎んでいたが、それはもう解決した事。

佐伯と本多と俺の三人が組んだプロジェクトも何とか一段落し、今はこうしてプライベートでもちょくちょく会うようになっていた。

今日は日曜日。

爽やかな秋晴れの高い空に真っ白なボールが弧を描いて飛んでくる。

ウォーミングアップを兼ねてのパス練習。

こうして本多と一緒にボールに触れていると懐かしささえ感じる。

本多はあの頃と全然変わっていない。

変っていたのはただ一つ――。

本多の傍には常に佐伯が居る事。


「二人とも、やっぱり上手いなぁ」

「何言ってんだ、克哉。お前も早く入れよ」

「えー、俺はいいよ。二人の動きについていけないし」

側で見ていた佐伯を本多は半ば強引に俺達の間に入れる。

謙遜しながらもどこか嬉しそうな佐伯。

俺が昔いた位置は、今は佐伯のポジションになっている。

本多の横に並ぶのは俺だ。

心のどこかで俺しかいない、そう思ってた。

仲睦まじく笑い合う姿に胸が痛む。

「……っ」

「おーい、何やってんだよ。松浦早くボール寄越せって」

「あ、あぁすまない」

本多の呼び声で我に返る。

そこで初めて指が白くなるくらいボールを握りしめていた事に気がついて、慌ててパスを出した。

それを佐伯が受けて本多に繋ぐ。

何気ない光景だ。

だが、たったそれだけの光景に胸がざわめく。

本多が佐伯を見ている。

アイツに笑いかけている。

それが何故か勘に障る。

/ススム



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