「ふふ、良い眺めでしたよ御堂さん」
部屋に入るなり鍵を掛けた。
ゆっくりとソファに御堂をおろし舐めるように見つめる。
その視線が気持ち悪くて思わず顔を背けた。
「全く、君の悪趣味さにはついていけない。だいたい何で私がこんな目に合わなければいけないんだ」
「御堂さんがいけないんですよ。藤田にあんなに親しげに話しかけるから」
「……は?」
予想していなかった名前が出てきて御堂はポカンと口を開けた。
「藤田が、どうしたって?」
「食事に誘っていたでしょう。俺に秘密で。しかも行きつけの店まで教えて」
「……」
思い出しただけでも腹が立つのか克哉の眉間に皺が寄る。
この間から機嫌が悪いと思っていた原因がわかってなんだか気が抜けてしまった。
「ハハッ、なんだそんな事か」
「そんな事ってなんですか。俺にとっては十分重要な事件ですよ」
「馬鹿だな、君は」
拗ねたような表情をする克哉の頬にそっと触れる。
自分にとっては大して深い意味は無かったのだが克哉が妬いていたと知って何となく可笑しかった。
「アイツはただの部下だ。接待に必要な時が来るかもしれないと思って教えてやっただけじゃないか」
「わかってますよ。でも、嫌なんです。御堂さんと俺の秘密が減ってしまうようで……」
「佐伯……、お前の気持ちはよく分かった。だが、いくらなんでもコレはやりすぎじゃないのか」
ベルトでがっちりと固定され、自分では取れないようになっている器具を指さし苦笑する。
克哉はそれをチラリと見つめ眼鏡を押し上げた。
「あぁ、それは俺の趣味です」
「はぁっ!?」
サラリと言いながらニヤリと口元を吊り上げる。
「御堂さんが誰のものなのかあいつにも教える必要がありますから」
「なっ! お前っ」
「クソ暑いのを我慢して快感に耐える御堂さんの顔、最高でしたよ。アイツが鈍すぎるのが計算外でしたが」
表情一つ変えずにとんでもない事を口走る克哉。
御堂の顔から笑顔が消え肩がプルプルと震えだす。
「暑いとつい色んな事を試したくなるんですよ」
流れるような手つきでズボンのホックに手を掛ける克哉。
「ふ、ふ、ふざけるなーーーーっ!!!」
怒り心頭の御堂だったが、それから二人が会議室から出てきたのは約一時間後だったらしい。
(終)
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