その様子を克哉は面白い余興でも見るように傍観していた。
ポケットの中にあるリモコンのスイッチを弱にしたり強にしたりして弄ぶ。
其のたびに御堂の身体がビクビクと震え、声を押し殺し耐えようとする。
何も知らない藤田が突然具合が悪くなった(ように見える)御堂を心配して背中を擦ったり覗き込んで顔色を伺ったりしているのが可笑しくて堪らない。
「佐伯さん、やっぱり御堂さんおかしいですよっ」
「そうか、全く仕方のないやつだな」
今にも笑いだしてしまいそうになるのを必死に堪え、ローターのスイッチを切ってやると御堂の側へと歩み寄る。
「大丈夫ですか? 具合が悪いのなら早めに言って下さいよ」
「なっ、君は私にこんな事をしておいてよくもぬけぬけとそんな事が言えるな!」
うっすらと目に生理的な涙を浮かべながら睨みつけてくる。
「シっ、藤田に気づかれますよ」
「っ!」
指を唇に押し当ててわざとらしく耳元で囁くと慌てて御堂は口を噤んだ。
こんな痴態を晒すのはやはり今まで培ってきたプライドが許さないのだろう。
鋭く睨みつけたまま唇をかみしめて屈辱に耐える姿にある種の興奮を覚える。
「御堂さん、歩けますか? ここ最近の疲れもあるだろうから隣の部屋で少し休んだ方がいい」
わざとらしく労わるふりをしながら、克哉は御堂に肩を貸し奥の会議室へと向かう。
「御堂さん、前から無理する傾向があったみたいだからなぁ……あんなになるまで仕事するなんて、凄いなぁ」
何も知らない藤田は二人が会議室に消えて行くのを関心しながら見送った。
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