「あっちーな」
「あぁ、暑い」
ムシムシとする部屋の中、扇風機が機械的な音を立てて回っている。
「全く、なんでクーラー壊れるかな」
「知らないよ、そんなの」
出張から帰ってすぐ本多を家に呼んだ。
呼んだと言ってもずっと一緒だったから話の流れでオレの家に行こうって事になっただけなんだけど。
本多がシャワーを使ってる間に部屋を冷やそうかとスイッチを付けたらいきなりクーラーから水が出た。
慌てて止めたけど部屋は水び出しで。
夜も遅いし、電気屋なんて何処も閉まってる。
仕方なく扇風機を引っ張り出して来たわけだけど……。
「なぁ、やっぱり今からでも本多の家に行く?」
「冗談だろ、せっかくシャワー浴びてさっぱりしたってのにまた暑苦しいスーツなんか着れっかよ」
「う……そう、だよな」
本多はランニングシャツにパンツ一枚。
確かに今更スーツを着直すのは面倒だ。
「じゃぁ、オレのシャツ貸してやろうか」
「面倒くせー」
きっぱりはっきりそう言われ苦笑いしか出てこない。
「ま、涼しくなる方法なんていくらでもあるさ」
「へ? ぅわぁっ!」
ニヤリといやらしい笑いを浮かべながらいきなり肩を掴まれた。
ぐるりと身体が反転し、気がつけば床に押し倒されてる。
「なっ、本多!」
「心頭滅却すれば火もまた涼しって言うだろ?」
「は? 意味全然違うし」
「いいからいいから」
破顔したまま首筋に吸いついて来た。
汗ばんだ肌に熱い唇が押しあてられゾクリと背筋が粟立つ。
「本多ってさ、頭の中そればっかだな」
「あたりまえだろ? 夏は特にそう言う気分になるんだよ」
「なんだよ、それ」
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