鬼畜眼鏡

LoveSick


「忘れ物はないか?」

「は、はい!」

月曜日、いつものようにスーツを着込み出社する準備をする。

結局、金曜日の夜から今朝までずっと二人はベッドの中。

(また中身の濃い休日を過ごしてしまった気がする)

自分たちはいい大人なのだからと頭では思っていても、気がつけばどちらかがそう言う雰囲気になってしまう。

(御堂さん、顔に似合わず絶倫だから……)

ふとそんな事を考えていると目がバッチリ合ってしまった。

「なんだ? 私の顔に何かついているのか?」

「い、いえ。 早く行きましょう!」

「?」

不思議そうにしている御堂の手を引いて、慌ててマンションのエレベータに乗り込む。

「克哉」

「はい?」

エレベータの扉が開く直前、名前を呼ばれて振り返る。

チュッ

唇に生暖かい感触があり、目の前にはしてやったりと悪戯っぽい笑みを浮かべる御堂の姿。

「今週末は、一人で来るんだぞ」

それだけ告げると、急にビジネスマンの顔に戻り、面食らっている克哉を残して御堂は行ってしまった。

(御堂さんって……大胆だ……)

自然と赤くなる頬を押え、惚けていると周囲からの視線が痛いほど突き刺さる。

気を取り直して、克哉も職場へと向かった。


「おはようございます」

「克哉! お前土日何やってたんだよ!」

タイムカードを押すなり本多が駆け寄って来て、克哉はドキリッとしてしまう。

「家に行ってもいねぇし、電話掛けてもでねぇし……」

ブツブツと文句を言う本多。

「何か、用だったのか?」

なんと言い訳をしようかと考えながら尋ねると本多がポンと手を打った。

「おぉ、そうそう。今週の金曜日、お前ん家に酒持ってくから空けておけよな!」

「ぇえっ、週末は用事があるって言ってるだろ?」

「んだよ、付き合い悪りいな。 毎週毎週断ってばっかじゃねぇか。とにかく、俺は決めたからな」

こうと決めたらてこでも動かない本多。

今週末は、御堂に逢えないと思うと一気に気分が暗くなるのだった。

/ススム



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