鬼畜眼鏡

LoveSick


「さて、と」

本多を乗せたタクシーが見えなくなったのを確認し今一度マンションのエントランスを潜る。

恐らくそうとう機嫌を損ねているであろう恋人が部屋で待っているかと思うと足取りが重くなる。

「ただいま戻りました」

「……あぁ」

恐る恐るカードキーを使って中に入ると転がっていた空き瓶は綺麗に片付けられていて本多と訪れる前の状態に戻っていた。

「あいつはちゃんと帰ったんだろうな?」

「はい」

「そうか」

克哉の言葉にホッとしたのか御堂は肩の力を抜いた。

「すみません。御堂さんに嫌な思いさせちゃって」

申し訳なさそうに頭を下げる。

「いや、いい。無理やりついてきたのはアイツなんだろう? それは仕方の無いことだからな」

てっきり嫌味の一つでも言われるかと思っていただけに克哉も内心ホッとした。

だが……。

「しかし、二人きりの計画を台無しにしてくれた責任は取ってもらう」

「え――ぅあっ!?」

冷たい笑みを浮かべ、強引にベッドルームへと連れてゆく。

あっ、と思った時にはもう、ベッドへ突き飛ばされた後で重みで軋む音が妙に生生しく聞こえた。

「ちょっ、たった今、本多を連れてきた事は怒ってないって……」

「アイツはいい。 なぜ家に来る前に連絡を寄越さなかった」

焦る克哉を鋭い視線が捉える。

「あ……それはっ」

「私がどれだけ週末を楽しみにしていたのかわからないのか? アイツが来ると知っていたらそれなりに気持ちの整理が付いたものを」

吐き捨てるように呟き、眉間に皴を寄せる。

確かにそうだ。

今日自分が此処に来る事はわかりきっていたのだから、御堂の落胆は大きいはずだ。

あの時は、本多に御堂のプライベートな番号を知っているのをしられたくなくて連絡しなかったのだが、連絡ひとつ入れておけば御堂にも心の準備が出来たかもしれない。

「……すみません、でした」

視線を逸らし小さく謝罪の言葉を述べた克哉を見下ろし御堂は小さく舌打ちした。

/ススム



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