もう、何本目のワインを空けただろうか。
床には空の瓶がいくつも転がっていて克哉はうんざりとした顔を本多に向けた。
「おい、本多。もうそろそろ帰るぞ」
「いいじゃねぇか、もう少しくらい。俺はまだしゃべりたりねぇし食い足りねぇんだよ」
さっきまでべらべらと熱く語っていたのにまだ話す気かと呆れてしまう。
チラリと御堂に視線を向ければ、あからさまに苛立たしげな表情で本多を睨みつけている。
「もー、御堂さんに迷惑だから。ほら、早く立てよ」
これ以上彼の機嫌を損ねるわけにはいかないと、未だに居座る気満々の本多を半ば強引に肩を貸して立ち上がらせる。
「すみません、ちょっと送ってきます」
「あぁ、さっさと連れて行け」
固い声を背後に感じながら克哉はでかい図体をズルズルと引きずって外に出る。
(まったく、本多の所為で今日の計画が台無しだ)
「克哉ぁ、俺はまだ飲めるぞ。今夜は朝まで梯子しようぜ」
憂鬱な克哉の気持ちなど知る由もない本多はまだ飲む気でいるらしい。
「もう、今日はもう帰れよ。俺も家に帰るからさ」
そういってマンションのエントランス前に停まっていたタクシーに本多を放り込む。
「帰るなら一緒に乗ってけよ」
「いいよ。もう一台後ろのに乗るから」
適当に口から出任せをいい、運転手に行き先を告げて、本多が何か言い出す前に強引にタクシーのドアを閉めた。
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