鬼畜眼鏡

LoveSick


週末――。克哉にとって恋人と共に過ごせる幸せな時間。

だから、金曜日は恐ろしいほどの速さで仕事を進めていた。

たとえどんなに忙しくても金曜の夜は外せない。

(これが終わったら、御堂さんと……)

特にどこかへ出掛けるというわけではないがそれでも彼と一緒に過ごせる。

それが楽しみで仕方ない。

終業時間になるにつれソワソワしだす克哉の肩にポンッと誰かが手を置いた。

「よ、お疲れさん! お前金曜になるといつも張り切ってるよな」

なんか、いい事でもあるのか?

そう尋ねられドキリと胸がざわめく。

「べ、別にたいした事じゃ……」

「ふぅん」

真意を確かめるように顔を覗き込まれ愛想笑いで返した。

御堂との事はトップシークレットだ。

ばれたら、彼の立場が危うくなってしまう可能性も出てくる。

彼の足枷にはなりたくない。

何が何でも隠し通さなくては。

「ま、それならいいや。あ、そうだ! 今夜は飲みにいかねぇか?」

「え? 今夜? 悪い。今夜は先約があるんだ」

「先約? 誰だよ、俺の知ってるやつか?」

誘いを断られた事で本多の表情が少し不機嫌になる。

「うん……御堂さんと、ちょっと……」

「御堂だぁ!?」

彼の名を口にしたとたん、本多の表情が益々険しくなった。

「んだよ、あいつなんかの約束なんかキャンセルしちまえばいいじゃねぇか」

「そういうわけにはいかないって。じゃぁ、俺もう行かなきゃ」

「あ! おい、克哉!」

丁度終業時刻になったためそそくさと席を立つ。

本多の話に付き合っていたら絶対に帰してもらえないような気がしたからだ。

「おい、克哉。アイツなんかと一緒にいるより俺たちと飲みに行ったほうが絶対楽しいって。 なんでこれから休みに入るのに親会社の上司と会わなきゃいけねぇんだよ」

タイムカードを押してからも、本多はブーブーと文句を言いながら付いてきた。

「別にいいじゃないか。 飲みに行くならまた今度一緒に行けばいいだろ?」

これ以上しつこくされては堪らないとばかりに克哉は盛大な溜息をついた。


/ススム



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