「たくっ、清水の奴わけわかんねぇ」
部屋で一人ゲームをしながら、吾郎は先ほどの清水の態度について考えていた。
放課後帰宅する時に清水を見かけ声をかけたが、なぜか逃げるように走り去ってしまったのだ。
本当に女心はわからない。
吾郎はそう思った。
ゲームにも飽きたのでうーんと大きく伸びをした時ちょうど携帯が鳴った。
着メロからそれが眉村だとわかる。
彼からかかってくるのは久しぶりでドキドキしながら電話に出る。
『茂野?』
受話器から聞こえる彼の声に耳がジーンと熱くなる。
直接会ったわけでもないのに、胸の高まりを抑え切れない。
『今、家にいるんだが、今から会えないか?』
どうしても連れて行きたいところがある。
寿也のことが頭をよぎり一瞬ためらったが結局行くことに決めた。
時間と場所を決めて、電話を切り呼吸を整える。
バタバタと階段を下りてゆくとちょうど風呂上りの英毅とぶつかりそうになる。
「おい、吾郎そんな格好で今からどこに行くんだ?」
「ちょっとダチんとこ。なんか用事があるみてぇだから」
英毅はチラッと時計を見た。
「まさか、女の所行くんじゃないよな?」
「んなわけねぇだろ。すぐ帰ってくっから心配すんなって」
英毅の心配を笑い飛ばし、自転車に乗って走ってゆく。
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