海堂編

LoveSick



数日後、吾郎は試合でノーヒットノーランを達成し新聞にまで大きく取り上げられる程になった。

(へぇ、凄いな……流石だね、吾郎君……)

スポーツ誌一面にデカデカと映し出された吾郎のガッツポーズに寿也の頬も僅かに緩む。

(僕も頑張らないと)

チラリと時計に視線を移し、新聞を机の上に放り投げるとベッドにゴロリと寝転がった。

(ノーヒットノーラン……か)

もしかしたら先日の”興味ない”発言が効いたのかもしれない。

実際、吾郎がいる聖秀が大会にエントリーしていた事は知っていたが、勝ち進んでいた事は知らなかった。

今はただ、立ち向かってくる相手だけを見て、分析して、より確実に試合を勝ち進んでいく事だけ考えていた。

他の高校の事をチェックしている暇は無い。

もし、このノーヒットノーランをもたらした要因の一つに自分の発言が少しでも影響しているとしたら……。

(ホント、変わらないね。吾郎君は)

知らないと言われ、その悔しさをばねにマウンドに立つ彼の姿が容易に想像出来る。

成長したのは身体だけで、海堂を出て行った頃とあまり変わっていないのかもしれない。

そう考えるとなんとなく可笑しかった。

薄暗い部屋の中、寿也は一人クックックと肩を震わせ笑っていた。

(これはひょっとすると、本当に僕らと対戦する日が来るかもしれない)

今の海堂には眉村や市原達がいる。

春の甲子園優勝を経験して自信もついた。

周囲の海堂に対しての評価もきちんと受け止めているつもりだ。

負ける気はしなかった。

(ワンサイドゲームにならなきゃいいけどね)

机の上の吾郎のガッツポーズを思い浮かべ、寿也はゆっくりと目を閉じた。

/ススム

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