翌日は生憎の雨だった。
学校が終わった後、吾郎はその足で海堂高校の試合を観戦に訪れていた。
球場前に掲げられた雨天順延の文字に小さく息を吐く。
あと2つ。
ようやく見えてきた彼らの背中。
やっと寿也達に追いつける。
そう思うと自然と気分も高揚する。
「ちぇ、折角あいつらの不細工な面拝んでやろうと思ったのに」
雨で中止となれば、こんな所に居ても仕方がない。
諦めて帰ろうとしたその時、視界の端に見慣れたスクールバスと寿也の姿を発見した。
「おーい、寿也!」
久しぶりに逢えた嬉しさで駆け寄るとバスに乗り込もうとしていた寿也の肩がピクリと反応する。
「吾郎君!」
振り返った彼は半年前と少しも変わっていないようで、懐かしいようなホッとしたような気分になる。
だが……。
2つ先で試合に当たる事を告げても寿也は眉一つ動かす事はなく、そればかりか「興味がなくて知らなかった」と話す。
監督に急かされて乗り込み、寿也達を乗せたバスが去って行った後でも吾郎は暫くその場から動く事が出来なかった。
「興味がない」
あっさりと、だが確かにそう告げた彼の言葉。
あまりにもそっけなさ過ぎて自分にすら興味を失ってしまったのかとすら思えてくる。
彼との再会を夢みていただけに、その態度に苦いものが込み上げてくる。
(ぜってーに勝ち進んで、あいつら鼻をあかしてやる!)
興味がない、なんて言わせない。
残り2試合何が何でも勝って、寿也の態度を改めさせてやる!
そう決意して持っていた傘をギュッと握り締めた。
「――おい、佐藤。本当によかったのか?」
「何が?」
海堂寮へ戻ると、珍しく眉村が声を掛けてきた。
「何が、じゃない。アイツの事だ。何を話したかは知らんが苦虫を噛み潰したような顔してたぞ」
「ハハッ、いいんだよ。アレで……この大会、変な馴れ合いは不要だろ?」
「それはそうだが……」
まだ何かモゴモゴと言いたそうにしていた眉村だったが寿也の淡々とした口調に肩を竦め目を伏せた。
「僕らは勝って甲子園に行くだけさ。吾郎君は関係ない。 夏の大会が終わるまで吾郎君との事は忘れろって言い出したのは君じゃないか」
「そう、だったな」
ポンポンっと眉村の背を軽く叩き、寿也は部屋へと戻って行った。
(夏の大会終わるまで……か。 そうだな……)
窓の外にチラリと視線を移し、眉村は緩く息を吐いた。
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