数時間後、吾郎は病院のベッドの上にいた。
右足首をギプスで固定され吊下げられた状態で虚ろに窓の外を眺める。
(どうしてこうなっちまったんだろうな……)
途中までは順調だった。
チームとしてみんなで試合を作っていこうという一体感すら感じ始めていた。
初めて聖秀野球部としての手応えを感じこれならまだまだイケると思っていたのに……。
一塁ベース上でランナーと交錯。
右足首に激痛が走りそのまま病院送り。
「くそっ!」
あまりの自分の不甲斐無さに胸をかき毟りたい衝動に駆られる。
なんであそこで交錯したんだ。
なんでよけれなかったのか。
一瞬の出来事であったとはいえ回避出来なかった悔しさと、自由の利かなくなった足のもどかしさで頭の中がグチャグチャになりそうだった。
主治医に手術をと、勧められて同意はした。
夏の大会に出場出来ないことも告げられた。
だが、どうにもピンとこない。
他人事のように主治医の話を聞いている自分が不思議だった。
足の怪我で夏の大会出場が出来ない?
冗談じゃない。
見舞いと称して怪我の具合の確認に来た江頭のわざとらしい神妙な顔つきが脳裏に浮かぶ。
絶対負けたくない。
寿也達と試合するまでは、怪我なんかの理由で諦めたくはなかった。
試合に出られる可能性が1%でも残っているのなら、どんな手を使ってでも復活したい。
5月の爽やかな初夏の風に揺れる木々を眺めながら決意を新たにするのだった。
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