吾郎たちがしばらくカラオケを楽しんでいると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
ドアから一番近い、宮崎が対応する。
開いたドアの隙間から、寿也の姿が見えた。
「おい、茂野。お前に用があるんだと」
対応に出た宮崎に変わって、吾郎は部屋を出た。
「あんだよ、寿」
「折角だから、君の友達も一緒にこっちで合流しないか?」
「え!?」
寿也の言葉に目が点になる。
「人数が沢山いたほうが盛り上がるし、たまにはいいだろ?」
「ちょっと待て、仲間に聞いてみないと」
「もし、ダメなら吾郎君だけでもいいんだけど」
顔は笑っていたが、奇妙な威圧感を感じ思わず息を呑む。
仲間たちは大方の予想通り行くのを渋り、結局吾郎一人が行くことになった。
(な、なんだ!? これは新手の嫌がらせか!?)
元仲間達と合流し促されるまま一番奥の眉村と寿也の間に座らされ、その張り詰めた空気に顔を引きつらせていた。
三宅や児玉など懐かしい面々はそんな3人の空気に気付くこともなく、盛り上がっている。
「おい、茂野。お前もなんか歌えよ。折角きたんだから」
「お、おう」
足を組んだ膝の上に本を乗せページをペラペラとめくって何にしようかと考えていると、ふいに寿也の手が太腿に当たる。
彼は、何食わぬ顔で曲を選びながら、吾郎の太腿の弱い付け根の部分をまさぐり始めた。
ギョッとして辺りを見回すが、ちょうどテーブルが死角になっており眉村を除く他のみんなには見えていない。
「お、おい寿! 止めろって」
「大丈夫、吾郎君が普通にさえしていれば、バレないから」
しれっと言い放ち、視線は本に移したまま、更に大胆に触れてくる。
すぐ横の眉村の視線は寿也の手に集中していて、吾郎の羞恥心を更に煽る。
「ちょっ、眉村が見てるっ」
「知ってるよ。だけど、君は僕のモノなんだから関係ないだろ? 」
耳元にわざと息を吹きかけられ、囁かれて堪らず小さな声が洩れ出る。
「……あっ」
慌てて口を手で塞ぎ、与えられる刺激に耐えようとソファに凭れる。
寿也は構う事無く刺激を与え続ける。
「……っ」
吾郎は苦悶の表情を見せ始め、頬はしだいに紅潮し瞳が揺れる。
彼のソレも次第に形を変え始め寿也の刺激に反応していることがありありと見て取れた。
眉村はその光景を目の当たりにし、身じろぎ一つできずにいた。
いつもの無表情の顔から、焦りの色がうかがえる。
口の中がからからに乾いて、ごくりと喉を鳴らす。
寿也はそんな眉村の様子を目の角のほうで捉え、心の中でほくそえむ。
(吾郎君は僕のもの。誰にも渡すつもりはない)
彼に見せ付けるかのように、更に行為をエスカレートさせてゆく。
本に目を通すフリをしながら、片方の手で刺激を繰り返す。
テーブル下で何が行われているか、他の仲間たちは知る由もない。
この状況は吾郎にとっても、眉村にとっても拷問だった。
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