長いキスは暖かかった。
そっと唇を離しては、見つめ合い再び口付ける。
寿也の想いに応えるように、自らも舌を絡め吸い付く。
その蕩けそうな感覚に、すぐ下に自分の家族が居ることすら忘れかけていた。
衣擦れの音が妖艶に響く。
全身が熱を帯び、すっかり彼に身を委ねる。
「吾郎君」
熱っぽい声で囁かれ、神経が一気に集中する。
身体を密着させお互いの肌の暖かさを感じた。
「好きだよ」
そう言って、彼はゆっくりと侵入してくる。
「寿っ」
優しく髪を撫でられ、指を絡ませ、口付けされて彼が動くたびに声が洩れ出る。
頭の中が真っ白になり何も考えられなくなる。
荒い息遣いと、卑猥な音そして喘ぎ声が、部屋中に響き渡る。
もしかしたら、部屋の外に聞こえてしまうかも知れない。
そんな考えはどこかへ吹っ飛び、本能のままに愛し合った。
「今日は一段と敏感だったね」
「悪りいかよ」
行為の後、嬉しそうな顔をして寿也は吾郎を見た。
彼は肩で荒い息をしながら、ぐったりとして恥ずかしそうに俯いた。
時計を見ると、もうすぐ八時を過ぎる頃だ。
「ごめんね、吾郎君。僕もう行かなきゃ」
急いで服を着て、もう一度彼にキスをする。
また今度連絡するから。そう言ってドアを閉めた。
階段を下りて、玄関へ向かい「お邪魔しました」と桃子に挨拶をしてノブに手をかける。
それとほぼ同時に玄関が開き、危うく寿也はよろけそうになった。
顔を上げると目の前に英毅が立っていて、ぺこりと会釈をし自転車へのって帰ってゆく。
(あの子、この間吾郎が抱き合ってた奴と違うな)
寿也の後姿を、英毅は訝しげな顔で見つめていた。
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