吾郎は自分部屋のベッドで目を覚ました。
きちんとパジャマに着替えており、昨夜のことは夢だったのかと首をかしげる。
なんだか、頭がガンガンして再びベッドに横になる。
「気がついたか?」
ひょっこり現れた、英毅を見て昨日のカミングアウトを思い出し布団を目深にかぶる。
「悪かったな」
「なんだよ、急に」
布団から目だけを覗かせると沈痛な面持ちの英毅が隣に座っていた。
「お前がそんなに思いつめてるなんて、知らなかったんだ」
「いいよ、別に。どうせ理解するつもりないんだろ? 俺は、わかってもらおうなんて髪の毛の先ほども思っちゃいねぇよ。だから、気にすんなよ親父」
そう言われ、英毅は複雑な表情を見せる。
「吾郎。お前今でも、打倒海堂を目指してるのか?」
「当たり前だろ? 何のために海堂を辞めたと思ってんだ。俺は海堂を倒すまで立ち止らねぇって決めたんだ」
その言葉に、ホッと安心した表情を見せる。
「あんだよ親父」
「お前が、恋愛にうつつを抜かして目標を忘れてるんじゃないかと少し心配だったんだが、大丈夫そうだな」
「当然だっつーの。野球と恋愛は全然別。そうじゃなきゃアイツ等と戦えねぇじゃん」
ガバッと起き上がり、再び頭痛がしてベッドに倒れこむ。
「無茶するな。お前熱があるんだから、今日一日位おとなしく寝てろ」
「へいへい、わぁったよ」
しぶしぶ布団に入りその日は一日中寝て過ごす事になった。
吾郎が眠っている間に、英毅と監督の山田が喫茶店でこれからの聖秀野球部のことについて話し合っているとはこの時は知る由もなかった。
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