あの日から、数日後聖秀学院の校舎の屋上に堂々たるグラウンドが無事に完成した。
全員で協力しあった達成感を味わいながら、一同は教室で着替えていた。
「なぁ、今日の祝いにみんなでパーっとどっか行かねぇか?」
藤井の言葉にみんな賛成する。
「茂野も来るだろ?」
「あ、あぁ」
気の無い返事をしながら何気なく外を見れば校門に人が集まっているのが確認できた。
ここ聖秀では女子が圧倒的に多いため、よくああやって誰かの彼氏が待っていることが多い。
特に興味も無く、いつもなら無視するのだが見覚えのある制服姿に目を凝らす。
輪の中心に、端正な顔立ちの自分と同じ野球のショルダーバックを肩にかけた学ランを着た男が一人。
見間違えるはずは無い。
あれは――。
「寿!!」
頭で認識するのとほぼ同時に、吾郎ははじかれたように教室を飛び出し校門へと向かっていた。
校門付近で寿也は女生徒に囲まれ困惑顔をしていた。
「寿!」
声をかけると、寿也はパッと顔を上げ嬉しそうな表情をする。
「吾郎君」
「お前、なんで?」
確か今日から遠征だと言っていたのに、なんでこんなところに?
聞きたいことは山ほどあるが、会えた嬉しさで声が上ずってしまいうまく言葉が出てこない。
パクパクと口だけを動かしている吾郎を見て寿也がクスッと笑った。
ふと気がつけば、周りにギャラリィが大勢いて吾郎は寿也の手を引っ張り急に走り出す。
誰にも邪魔されたくない。
そんな思いが彼を突き動かしていた。
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