海堂編

LoveSick


翌日、学校へ行くと藤井は左手にギプスを巻いていた。

昨日の試合で、吾郎の球を捕りすぎた為だ。

幸い大した怪我ではなく、全治一ヶ月という診断らしい。

「まぁ、暫くは練試合もねぇしゆっくり治せ」

「あぁ。そうだな……ん? お! 新しい恋女房のお出ましだぜ?」

藤井に肘で突かれ視線を移すと、昨日野球経験者だと発覚したばかりの田代が立っていた。

「よぉ、田代! ちょっと練習に付き合ってくれよ」

「練習? 何言ってんだ。 他の奴らは練習免除が条件で入部してるのに、何で俺がそんな事しなきゃなんねぇんだ! 大体、硬球が使えるグランドはあるのか? 場所が確保できるなら考えてやるよ」

ツーンと態度に、吾郎は憤慨した。

(たくっ、なんだよ田代の奴……少しくらい協力してくれたっていいじゃねぇか)

授業中、先ほどの田代の冷たい態度にイライラしていた。

寿也だったら、絶対断ったりはしないのに。

チラッと現在の恋女房と視線があったが、つーんとそっぽを向かれてしまう。

可愛くねー奴。

どうしても、寿也と比較してしまい、深いため息をついた。

窓の外をボーっと眺め、ふと昨日の彼との事を思い出す。

久しぶりに触れ合った肌はとても熱く、情熱的で何も考えることが出来ないくらい彼との行為に没頭してしまった。

手を伸ばせばすぐそこに彼がいて幾度と無く指を絡ませ、口付け合う。

蕩けそうなほどの甘い感触に自分の口元にそっと触れて、ハッと我に返る。

(俺、授業中になに考えてるんだよ!!)

耳まで染めて、顔を机に突っ伏する。

そんな様子をすぐ後ろの席の藤井が見つめていたとは、全く気がつくことは無かった。


/ススム

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