海堂編

LoveSick


その後夕暮れまで練習をし、帰る方向が同じだったため並んで通学路を歩いてゆく。

「つき合わせて悪かったな、清水」

「仕方ないよ。今度の試合、あたしが捕らなきゃ誰も捕れないんだろ?」

彼女は、少しヒリヒリする左手を隠しながら微笑んだ。

「……手、痛むのか?」

彼女の手を取り、どこか痛めていないか確認する。

幸いどこも痛めていないようで、ホッと胸をホッと胸を撫で下ろした。

それと同時に、女性の手はなんて柔らかいのだろうと思った。

彼女が頬を染めていることにも気がつかず、じっと手を見つめる。

「は、離せよ本田」

「あ、わりぃ」

パッと手を離し、清水は恥ずかしそうに手を隠す。

しばしの沈黙。

吾郎はこういう雰囲気はどうも苦手で、後ろ頭を掻きながらただ黙って歩く。

隣に居るのが寿也だったら、どんな会話をしてただろう。

そんなことを考えているうちに、急に彼の声を聞きたくなった。

しばらくそのまま歩いていき、お互いの家へと通じる分かれ道で別れる。

一人になり、ふと立ち止まる。

寿也は元気にしているだろうか。

最後に別れたあの日から、もうだいぶ経つが一軍に昇格できたのか……?

彼はどんどん上達し自分より上へと進んでいるのに、一向に出口が見えない自分の道に苛立ちを覚える。

もっと、自分を磨いて自己流でも負けないくらいの強さを身に付けなければ。

立ち止まってなど居られない。

吾郎は急いで家に帰り、一人遅くまで投球練習を続ける。

ふと、自分の携帯がなっているのに気がついた。

それは、寿也からの電話だった――。


/ススム

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