海堂編
LoveSick
「母さん、俺ちょっと寿也送ってくるから」
夕方になり、二人はゆっくりと家を出た。
途中の公園で、ベンチに座る。
「吾郎君、覚えてる? この公園で僕に言ってくれた言葉」
「……?」
「僕たちの関係はずっと変わらないって」
どこか寂しげに、公園で遊ぶ子供を見つめる寿也を吾郎は黙って見つめていた。
確かに今年の春休み、この場所でそう言った。
「今でも、あの時と同じ気持ちで居てくれてる?」
「ああ。変わらねぇよ……」
寿也の言葉に、胸がズキっと痛む。
彼への想いは確かに変わらない。だけど新たに心の片隅にもう一人現れてしまったから。
寿也は、それ以上何も言わなかった。
だんだん、辺りが暗くなり蝉と変わって夜の虫たちが鳴き始める。
公園で遊んでいた子供たちも、次々に家へと帰ってゆく。
「来週の一軍昇格試験、頑張れよ」
「うん。吾郎君も」
がっしりと握手を交わし、軽くキスをして二人は別れた。
吾郎は、彼に隠し事をしているので、とてもいたたまれない気持ちでいっぱいだった。
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