海堂編

LoveSick


「――好きだ、寿」

突然幼馴染に真顔で言われ、寿也は驚いて顔を上げた。

「吾郎君、本当に?」

俯き表情はよくわからないが、小さくコクリと頷く。

嬉しかった。しかし、同時に夢かもしれないとも思った。

夢ならこのまま醒めないで欲しい。

中学で再開したあの日から、ずっと彼のことを思い続けていたのだ。

最初はライバルとして意識していた。

どこまでも純粋で、投げる球のようにまっすぐなその性格に知らず知らずのうちに引き
込まれていった。

「僕も」

そっと腕を伸ばし、肩を抱く。

吾郎は潤んだ瞳でじっとこちらをみつめている。

だんだんと顔が近づき、そっと唇を重ね合わせた。

何度も舌を絡ませ、首筋に唇をを這わせる。

衣擦れの音が妙に艶かしく、耳に残る。

シャツを捲くりあげ、小さな蕾を舌で辿ると、たまらず吾郎の身体が妖艶にしなった。

「可愛いよ、吾郎君。」

その反応を楽しみながら、愛しいその人の名前を呼んだ時その時だった。



――ジリリリリリリリリリリリッ――



はっと、目を覚ますとそこは海堂高校の厚木にある二軍寮。自分の部屋のベットの上だ
った。

全身からドッと汗が吹き出していて、慌てて自分の下半身を覗き込む。

とりあえず、事なきを得てホッとしていると上から視線を感じた。

「なーにやってんのかなぁ? 寿くん」

「!!」

同室の吾郎がニヤニヤしながら覗いていた。

「お、起きてたの」

「あぁ、目覚ましが鳴るちょっと前からな」

すっかり動揺している寿也の反応を面白がってさらに追及しようとする。

「んで、なーんの夢見たてんだ?」

いつも沈着冷静な彼が、顔から火が出そうなくらい真っ赤になっているので、物珍しげ
に顔を覗き込む。

「もう、からかわないでよ!」

たまらず、寿也は布団で顔を覆ってしまった。

心臓がバクバク言ってる。

言える訳が無い、本人を目の前にして先ほどの夢の話など、出来るわけがない。

そんな事を考えていると言ったら、彼はどんな顔をするのだろう?

気持ちが悪い、と軽蔑して幼馴染と言う関係も終わりになってしまうのではないか。

何も知らない幼馴染は、なおも追及しそうな顔をしてたが、寿也が口をきゅっと結んで
絶対にしゃべらない様子を知ってやがて諦め、下に降りてきた。

「まぁいいや。それより早く着替えようぜ。朝練に遅れると、監督がキャンキャンうる
せーぞ」

時間にうるさい海堂は遅刻厳禁だ。

外からは、すでに何人かのチームメイトの声が聞こえている。

寿也は慌てて飛び起き、身支度を整えると寝癖をつけたまま数分後にはグラウンドに立
っていた。

いつも余裕を持って行動する彼には、とても珍しいことだった 

モドル/ススム

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