寿也が実家へ戻って三週間が過ぎ、吾郎は一人暇をもてあましていた。
昼間は気の合う仲間とワイワイ大騒ぎしているが、夕食を食べ、部屋に戻るとボーっとしている時間が長くなった。
「寿、もう寝てるよな」
時計は夜中の一時を指している。
つけっぱなしのテレビからは、軽快な音楽が流れてくる。
いつも二人で笑いながら見ていたお笑い番組も今日はやけにつまらなく思えた。
「面白いのないな」
プツッと電源を切ると、自分のベッドに寝転がる。
知らず知らずのうちに吾郎の中で寿也の存在が大きくなっていた。
今まで欠かさずに行ってきた自主トレも集中力を欠いて、あまりはかどらない。
会いたい。
声が聞きたい。
せめて電話越しでもいいから、話がしたい。
堪らず身を起こし、きれいに整理されている寿也の机を見つめる。
彼のように几帳面ではない吾郎は、彼の家の電話番号を控えていなかった。
いつもかけてくるのは寿也からで、自分がかける必要はなかったから。
改めて自分の大雑把さに嫌気がさした。
部屋を出てフラフラと消灯後の薄暗い廊下を当てもなく彷徨う。
公衆電話のところで立ち止まり深いため息を付くと再び歩き出す。
気が付けば、自動販売機の前まで来ていた。
持っていた小銭でコーラを買うと近くにあったソファに腰を下ろす。
一口飲んで小さなため息を洩らす。
「なにやってるんだ?」
急に近くで声がして慌てて振り向く。
いつの間にか横には眉村が座っていた。
「佐藤のこと、考えてたんだろ?」
「別に」
「会えなくて、寂しいのか?」
「んなんじゃねーよ」
カッとなって立ち上がり、今は夜中だということを思い出して、慌てて口をふさぐ。
「お前こそ、なにやってんだよ?」
再び椅子に座りなおし、眉村を見る。
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