確かにさっきの娘は、可愛いほうだったと思う。
顔立ちも整っていたし、女の子らしい体つきをしていた。
胸もまぁ、大きいほうだったように思う。
だけど寿也には、目の前にいる幼馴染のほうがよっぽど魅力的に見えた。
自分はゲイではない。
その証拠に児玉や国分、その他のチームメートを見ても何の感情も湧いてこないし、
たまに雑誌のグラビアアイドルの写真を見て、あぁ、可愛いなと思うこともある。
けれど、それ以上の関心はなかった。
クラスメイト達が色恋沙汰で大騒ぎしていても、校内で一番人気のある女子を目の前にしても、特別な感情は感じない。
茂野吾郎という存在が特別なのだ。
彼の思いなんか知る由もない幼馴染は、芝生にゴロンと寝転がる。
秋風がそよそよと吹いていてとても心地いい。
「それに僕、好きな人がいるから」
「うっそマジ!? 俺の知ってるやつか!?」
そういう話になると妙に食いつきがいい。吾郎は興味津々に次の言葉を待っている。
「片思いなんだ」
「告白、しないのか?」
「無理だよ。絶対振り向いてもらえないの解ってるから」
あまりに意外な答えに、彼は再びストンと腰を下ろす。
「そうかなぁ。寿みたいな奴に告られたら、断るやつなんかいないんじゃ……」
「ホントに? 試してみてもいい?」
「え? 試すってな……に……寿!?」
急に腕をつかまれ、肩を引き寄せられる。
そしてそのまま唇を塞がれ……。
二人の時間がしばし止まる。
「ゴメン。ビックリさせちゃって」
「あ、えっと……?」
まだ自体がよく把握できていない吾郎は目を白黒させ、ひどく混乱しているようだ。
「ほんとはずっと黙ってようかと思ってたんだけど……。」
立ち上がるとちょうど昼休み終了のチャイムが鳴った。
「もう行かなきゃ。 ほら吾郎君も」
「あ、あぁ。」
一足先に駆け出してしまった寿也の後姿を目で追いながら呆然と立ち尽くす。
まさに晴天の霹靂だった。
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