「そうだよ。とにかく、飢えた狼の懐に飛び込むようなことだけは止めなよ」
食べられちゃったら大変だから。という寿也に対し、吾郎はほんの少し呆れてしまった。
(小森に限ってそんなはずはない)
そう思っていた。
「僕は心配だよ」
「何が?」
「吾郎くんが余所へ行って誰かに迫られ、撫でられ、舐められたりしたらどうしようかって」
「おいおい、どこを撫でるって!?」
ため息交じりの寿也の言葉に、変なこと考えやがってと、呟く。
「拗ねないでよ。とにかく、もう少し警戒心持たないと、あっという間にヤラれちゃうよ」
「お、おい寿……俺、男だぜ?」
吾郎の顔は思わず引きつる。
有り得ないだろそんな事。
「大丈夫だよ寿。俺が好きなのはお前だから」
寿也の目を見ながら言うと、寿也もコクリと頷いた。
「でも、吾郎くん。余所へ行ってもし浮気したら僕、許さないから」
「あ、当たり前だろ。浮気なんか……するわけねぇじゃん。 ははは」
にっこり笑う彼の目が笑っていないので、吾郎は渇いた笑い方をした。
頭の片隅に眉村が浮かんだが、慌てて振り払う。
「ところで、吾郎君」
「なんだよ?」
「休憩も終わったことだし、さっきの続き、しよ?」
「はぁ!? 続きってまだヤル気かよ!?」
目を丸くして、後ずさる吾郎の肩をガッチリ掴みにっこり笑う。
「当たり前だろ? だって僕はまだ一回しかイってないし。あんなので満足できるわけ無いだろ?」
どうせ、明日もあさってもオフなんだから。一週間もガマンさせてそれなりに覚悟は出来てるよね?
と言われ、サーっと青ざめる。
「お、おい寿!ちょっと。わぁ! ヤメロって」
その晩は何度も何度も求められ、寿也は一週間分のストレスを一気に解消したのであった。
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