「どうやら、僕より吾郎くんの方が余裕なかったみたいだね」
ジュースを手に部屋へ戻ってきた寿也は、ベッドで未だぐったりしている彼にからかうような口調で言った。
「う、うるせぇよ。ほっといてくれ」
「もう、いつまで拗ねてるのさ」
クスッと笑いながら首筋によく冷えている缶をちょんっとくっつける。
「!!!」
あまりに冷たさに身体がビクンと跳ね上がる。
「何すんだよ! 寿!!」
飛び起きて文句を言おうとしたら、すぐそこに寿也の顔があった。
「無理して、禁欲なんかするからだろ?」
シテ欲しかったらいつでもシテあげるのに。なんて冗談めかしくジュースを手渡す。
「別に、そんなんじゃねぇけど……なんか自分でもよくわからねぇ」
何であんなに感じてしまったのか? 理由がわからなかった。
ただ、寿也に触れられて、いつもより余計にドキドキしたのは確かだ。
片膝を立て、前髪を触りながら難しい顔をする。
「そう言えば、次行くとこもう決めてるのかい?」
「あぁ、とりあえず三船にしようと思ってる。あそこには小森や山根がいるし……」
小森の名前を聞いて寿也の眉がぴくっと動く。
「ダメだよ。そんな所」
「あぁ? なんでだよ寿也?」
「だって三船なんか行ったら、小森君にお持ち帰りされちゃうじゃないか」
「はぁ?」
最初、寿也の行っている意味がわからず首を傾げる。
数秒間後ようやく意味を理解した。
「何言ってんだよ、あいつはただの幼馴染だぞ!?」
「僕だって最初そうだったじゃないか」
「そうだけど、だいたい、男が男に欲情するわけねぇだろ? あそこ共学だし」
「僕だって男だよ」
「うっ」
何を言っても言い返され、言葉に詰まる。
「俺と、小森はただの投手と捕手だ。リトルの時からそうだったし」
「だから、余計に心配なんじゃないか! リトル時代から吾郎くん可愛かったんだから」
吾郎は飲んでいたジュースを思わず気管につまらせゴホゴホ咳き込んだ。
「俺が可愛いわけねぇだろ!?」
「可愛かったよ! 僕はリトルで再会したあの日から君の事ずっと思ってたんだ」
「えっ、お前そんな昔から、そんな事考えてたのかよ」
寿也の衝撃的告白にあっけにとられる。
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